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要望書添付資料

05.10.03.

特定重要病害に指定されているスイカ果実汚斑細菌病(Bacterial fruit blotch:BFB)は山形県で国内初発生が確認されてから、既に7年が経過しました。初発生以来、農林水産省、関係県、種苗会社等による本病発生・拡大阻止へ向けての努力にもかかわらず、その後も年次的、地域的に散発的発生を繰り返し、本年もまた国内複数地域で発生が確認されました。その上、かねてより恐れられていたように、本年、メロンでも複数地域で発生がみられるに及び、接木用台木植物も含めウリ科野菜全般への波及が心配され、このまま推移すると、遠からず本病病原細菌が我が国に定着することは必至と考えられます。
 一方、諸外国では、1989-95年のアメリカ合衆国での再発生以来、中南米、中近東、アジア各国、南アフリカ、オセアニア、南太平洋島嶼等へと急速に汚染が拡大しています。現在、日本各地で流通、栽培されているスイカ、メロン、接木用台木植物種子のかなりの部分がこれら海外諸国での採種によるものであります。その意味からも、このまま推移すれば日本が早晩、名実ともに「BFB汚染国」になる危険性は極めて高いということができます。

わが国におけるスイカ(ウリ類)果実汚斑細菌病発生の特殊事情
 わが国におけるBFBの発生とひいては防除技術を特異なものにしている最大の理由は、接木栽培にあるといえます。古くスイカに始まった接木栽培は、主として低温伸長性と土壌伝染病対策のため、今日では、メロン、キュウリでも標準的な栽培法になっています。そのため関連する作物種は、スイカ、メロン、キュウリのほか、ユウガオ、カボチャ、トウガンと多岐にわたり、問題を複雑化して発生原因の疫学的解析を困難にしています。 BFBの病原細菌はまず汚染種子から発芽した植物体表で増殖し、接木操作に使用するナイフにより次々に伝染し(この段階では発症していないので汚染株は認識できません)、その後の高温多湿条件下での養生中にも植物体表で増殖を続け、養生後の頭上潅水による飛沫伝染によりさらに多くの個体に伝播する可能性が極めて高いと言えます。したがいまして第一次伝染源である汚染種子がそれこそ万に一つでも混入すれば、条件次第で、即大発生につながり得るといえます。
 本病の蔓延は我が国のウリ科野菜生産にとってはもちろん、種子生産に携わる種苗会社にとっても由々しいことであり、一刻も早く、官民一体となってその撲滅に取り組まなければならないと思います。どうぞ、事情をご賢察の上、以下に述べる諸点につき、行政・技術両面からのご支援を賜りたくお願い申し上げます。

1.種子消毒薬剤の登録推進
上記のように、本病の第一次伝染源である汚染種子が万に一つでも混入していると、大発生につながる危険性がありますので、種子には極めて高度の健全性が求められます。本病を極めて防除困難な病害にしてきた最大の理由は、このようなニーズに適う高性能の種子消毒用薬剤がなかったことであるということができます。とくに我が国の場合、野菜・花きの種子伝染性細菌病を対象とした種子処理用の登録農薬が皆無の状態が続いていますが、これはまさにその欠陥を象徴するケースということができます。今までに既成の農薬に替わる様々な化学的あるいは物理的種子消毒法が提案されていますが、種子の品質(発芽)に影響がなく、かつ消毒効果の高い実用的(種子産業に利用可能な)消毒法は未開発の状態であります。
 先年、種苗会社4社が参加して実施されたSTAFFの種子消毒技術開発にかかるプロジェクトの中で、塩基性塩化銅水和剤(ドイツボルドーA)懸濁液と有機酸(例えばコハク酸)溶液との混液に種子を浸漬すると、細菌性種子伝染病に対し、極めて高い消毒効果が得られることが明らかになりました。 しかし、この消毒法には、下記のように、農薬登録にかかる一、二の問題があります。
 問題点(1):ドイツボルドーAには、野菜類種子処理にかかる登録がありません。したがって現在は本剤を種子処理に使うことはできません。そのため、現在農薬会社に代わり、日本種苗協会が費用を負担して、本剤の野菜類種子伝染性細菌病を対象とする種子処理剤登録をとるべく適用拡大登録申請の前提となる、薬効試験を準備中であります。
 問題点(2):農薬に他の物質を混用することは原則として認められていません。そのため、ドイツボルドーAとコハク酸(食品添加物登録あり)を混用しようとすると農薬取締法に違反することになります。コハク酸には農薬登録がないからです。直接食してもよいとされている物質を、絶対に作物に残留するはずのない種子に処理してなぜいけない(危険)のでしょうか? 論理的には、「食品添加物が危険」というおかしいことになりかねません。
上記の対策には、現在の法令及びその運用にはそぐわないところもあるかもしれませんが、ウリ科野菜生産併せてその種苗生産に携わる業界の危機回避のため、特段のご配慮により本剤の登録推進による実用化に向けて、早急な対応をお願い致します。
 なお、輸入植物検疫要綱の一部改訂(2001.10.25)により、輸入検疫で不合格になった種子であっても、国内(植物防疫所以外の場所)で登録農薬による消毒の結果、汚染がないと認められれば輸入できることになっていますが、もし、植物防疫所の検査により、ウリ科野菜の種子が本病病原細菌に汚染されていて不合格とされた場合、BFBを対象とした種子処理用登録農薬がありませんので、この規則は適用できず、種子は廃棄、焼却あるいは送り戻しの処分を受ける事になります。有効な種子処理法があるのにもかかわらず、折角ご配慮いただいた規則の適用を受けられないのはまことに残念です。その意味からも、ドイツボルドーAの登録の推進と有機酸の混用による防除法が一日も早く実用化するよう、特段のご配慮をお願い致します。
 今までの国内発生はあたかもゲリラのように、年次的、地域的に散発して、一、二年で終息していることから見て、おそらく輸入種子からの種子伝染によるものであろうと推測されます。但しその汚染種子混入率は、現在の検査法では検出不可能なほど低かったと推測されます。
このような汚染度の低い種子の検査結果は極めて変動しやすく、しかも非検出の種子からでも発病がみられることもあることは、より安全な方策としては、健全種子生産、種子汚染検査、種子消毒等、現在考えられる対策を総合的に利用していくのが望ましいと考えています。そのための有効な手段である種子消毒剤の登録に、格段のご配慮を賜りたいと存じます。

2.種子検査技術の開発
 BFBにかかる種子汚染検査技術については、国際的な健全種子検査技術開発のための組織であるISHI(国際健全種子推進機構:日本種苗協会として参加)においても、機構設立間もなくから検討の対象としていて、現在、Sweatbox grow-out test が推奨されています。例えば、オランダの種子検査会社Naktuinbouw(元NAKG:半公的機関)では、本法にPCRと接種検定を加えて検査を行うと表明しています。 一方、豊富な経験から種子検査全般に、国際的に高い信頼をかち得ている、米国の種子検査会社、STAでは、10000粒の試料による Greenhouse grow-out test を用いています。 
 近年、我が国の種苗会社では、BFBの汚染に備えて、これら外国の種子検査機関を利用している例が急増しています。それに関して、しばしばこれら機関による検査データと我が国の公的機関の検査結果とが一致しない事例があるやに聞いています。このことは種子検査技術が未だ完全ではなく、研究と技術開発の必要性を示しています。
 種子産業先進国では、大学、国立試験研究機関で種子伝染病の生態や防除,当然その一部として種子伝染病検査技術の研究がなされています。ところがわが国では、かかる研究に携わる研究者は極めて少なく、辛うじて種苗会社の研究により先進国で開発された技術に追いつくのがやっとという実情にあります。どうか、この実情をご理解いただき、独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構の研究機関、及び種苗管理センター等において種子汚染の検査法の開発を推進していただきたいと切望いたします。と同時に独立行政法人研究・検査機関と種苗会社による、種子伝染病菌検査技術についての共同研究の推進をお願いしたいと思います。

3.公的種子検査機関の充実
 種子産業先進国にはそれぞれ公的(独立)検査機関があります。ISHI(国際健全種子推進機構)を構成する5か国について言えば、アメリカ:アイオワ州立大Seed science centerとSTA(私立)、フランス:SNES(国立)、オランダ:Naktuinbouw(半公的機関)、イスラエル:Volcani Center(国立)などがそれです。なかでも、アメリカとオランダの検査機関は検査実績で群を抜いていて、世界の種子検査機関をリードする存在といえます。BFBの発生以来、日本の各社からは膨大な数の種子検査依頼が主にSTAに送られ、推測で億に及ぶ検査費が支払われていると見られています。
 わが国の種苗会社のうち、自社である程度の検査が出来るのは数社に過ぎず、他の多くの会社はこれら外国の機関に試料を送って検査を依頼するしかない実情です。
 一方、我が国の検査機関はといいますと、組織的には、(独)種苗管理センターがそれに当たります。種苗業界としては、同所が国の機関であったときから、種子伝染病にかかる依頼検査を切望していましたので、独立行政法人化に伴い大幅にこの要望が適えられると期待していましたが、独法化から5年を経過した今になっても、ごく一部の病害について依頼検査を受けていただけるにとどまっています。今年度は同所の評価の年です。この機会に、依頼検査部門の大幅拡充を期待致しております。さもないと、数年前に一度動きがあった、STAの日本支所開設の話が再燃しないとも限りません。まだ当分の間、日本は外国の種子検査機関のよい顧客であり続けそうです。
 検査試料種子供託の提案:諸外国の種子検査機関を参考に、検査データをめぐる問題の発生を避けるため、種苗会社と国、県などの全検査機関、試験研究機関は、検査に先立ち、公定法により採取された検査試料と等しい試料標本を第三者機関(種苗管理センター)に供託して再検査に備えようというものです。この理由は、検査結果の信頼性を担保させるため、問題が起こった場合に同じ種子について再検査ができるようにするためです。

終わりに
 BFB問題をきっかけに、我が国の野菜生産、野菜種子生産全体をめぐる様々な問題が表面化しつつあります。BFB問題は種子生産に携わる企業の協力なしには決して解消できるものではありません。
 現在、世界各国とも種子汚染には極めて敏感になっており、日本から輸出する種子についても、公的機関による検査証明を求められる例が増えています。しかし、日本では現在のところ一部のサンプルについて (独)種苗管理センターが対応しているのみで、全般的にそれを引き受けてくれる機関がありません。そのため、種苗会社はやむを得ず、外国の検査機関・大学等に依頼せざるを得ないのが実情です。国内の種子流通についても、例えば、BFBのような国の特定病害に指定されているようなものについては、国内の公的検査機関の検査結果を添付して流通させるなど、現在我々が取りうる最善の科学的根拠にたって種子の安全・安定供給を図るべきであると考えます。皆が最善の努力をした上で発病が見られたときは、交通事故のようなものと考えざるを得ませんが、単に関係者の責任を追求するだけではなく、その原因を究明して、より高度な検査法の開発、蔓延防止の方策等、総合的な対応につなげるべきと思います。上に述べた検査種子の供託制度の創設も、最善の努力を明示するためにも必要と考えます。
 既に種苗業界は一致団結してこれらBFBをはじめとする種子伝染性病害防除のための活動をしているところでありますので、貴職におかれましても、農林水産行政の立場から従前にも増した、ご指導とご支援を賜りたくお願い申し上げます。


以 上

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