この度、金子昌彦前会長の後任として一般社団法人日本種苗協会 第12代会長に就任いたしましたので、ここに謹んでご挨拶申し上げます。
前任の金子昌彦会長におかれましては、業界を取り巻く環境が厳しさを増す時勢の中、その深い専門知識と誠実なお人柄により強力なリーダーシップを発揮され、改正種苗法による植物新品種の権利保護レベル強化の実現に向けた活動や、継続した食育推進プロジェクトをはじめとする活動を通じ、国連の持続可能な開発目標 (SDGs) への対応も図りつつ、業界の活性化と官民協力体制の構築を推進されました。加えて、昨年10月に250名の参加者を得て、協会設立50周年の節目に相応しい記念式典を開催され、日本種苗協会の会員相互や農林水産省・関係機関との間で更なる団結が図られたものと確信しております。これまで業界発展のために献身的に務められたご功績に対し会員を代表して深く感謝申し上げます。
さて、種苗業界を取り巻く社会環境の変化はますます速度を増し、それに伴い対応すべき課題も飛躍的に増加してきております。
食料・農業・農村基本法の改正に向けて農林水産省が示された「食料・農業・農村施策の新たな展開方向」では、食料安全保障の強化、スマート農業の実用化、農林水産物・食品の輸出促進、農林水産業のグリーン化の4本柱が掲げられ、そのいずれについても着実な技術的基盤が不可欠であり、新品種の開発・普及が果たすべき役割は大きいと感じます。
食品の80%が植物ベースであり、必要な食料作物を育てるために必要な種子を生産できる国は一つではないこと、種子の相互依存と種子の国際移動は食料安全保障に不可欠であることから、グローバルに種子が各国間を移動できるようにすることが求められる一方で、新たな種子伝染性病害などを対象にした植物検疫条件の強化への対応が、業界全体で国際的に取り組むべき大きな課題となっております。また、海外遺伝資源の入手の困難性も業界として対応すべき課題であり、ゲノム編集などの新しい技術については、慎重に関係者と連携を取りながら社会的な認知を得つつ進めることが重要と考えます。
日本の種苗産業は、世界的に優れた技術水準にあり、国内外の市場に向けて多くの品種を開発し供給しています。今後、更なる変化への対応として、気候温暖化対応、減農薬・減化学肥料、省力化、輸送性や貯蔵性向上等の多岐にわたる特性面で優れた品種の育成・普及が課題となっていることから、引き続き、農林水産省及び関係機関との連携を図りつつ、メーカー・卸・小売の各会員の皆様とともにこれからの国内の農業経営の発展に寄与して参りたいと存じます。
日本種苗協会の活動においては、周辺環境の変化への迅速な適応力や国際競争力を高め、各部会、各委員会と相互に連携を取りつつ、これらの課題解決を目指して参りますので、皆様のご協力をお願いいたします。まずは、既にご承認を戴き着手しております令和6年度事業を柱として、コンプライアンスへの取り組みにも重みを置き、業界の信用を高めていきたいと考えています。
また、農業生産現場では生産コストの増加に対し、農産物価格への転嫁が出来ていない厳しい状況が続いていますが、各支部等の会員とともに地域活性化への精力的な活動を通じて、日本種苗協会の存在意義を高めるとともに、社会への情報発信を広げ、世の中に「種苗産業」を認知していただけるよう努力を惜しまない所存です。
この度の会長就任は、身が引き締まる思いでございますが、皆様のご期待に応えられる日本種苗協会を目指し、業界発展のため、精一杯努めて参りますので、重ねて皆様方のご支援とご協力を賜りますようお願い申し上げます。