会長のご挨拶

会長再任ご挨拶

このたび、一般社団法人日本種苗協会の会長に再任されましたので、ご挨拶申し上げます。

新型コロナウイルスの影響で、定時総会及び関連理事会が書面審議になるという異例の状況のなかにもかかわらず、何とか新体制が発足できましたのも、ひとえに会員の皆様のご理解とご協力があったからこそと考えております。

不透明な社会情勢の中での船出となりますが、選出頂きました役員一同、身を引き締めて任に当たる所存です。

第11代会長 金子 昌彦

2年前を振り返ってみますと、その年に開催された平昌オリンピックを機に、育成者権の重要性が世間一般にも認知されるところとなりました。農林水産省において種苗法改正に向けた検討が進められ、日種協でも、農水省の有識者による検討会において業界の意見を主張するなどの貢献をしてきました。

ゲノム編集もこの時期に周知が進んだ技術です。日種協としても、ゲノム編集に関する公開討論会に協賛するなど、社会的な受容に向けた活動を続けてまいりました。

新種苗読本、協会ホームページ、食育プロジェクト、シードアドバイザー制度

この2年間での日種協内の変化としては、国際部会の発足が挙げられます。業界の国際化がますます進むなか、ISF(国際種子連盟)やAPSA(アジア太平洋種子協会)からの日種協への期待が高まっており、対応能力を強化するため組織変更に至ったものです。合わせて、主に国際業務を担当する職員も増員し、早速様々な情報収集や意見の取りまとめに取り組んでいるところです。

一方、本来はオリンピックイヤーでありました2020年は、新型コロナウイルスの感染拡大により、情勢が一変してしまいました。瞬く間に世界の動きが止まり、国内でもあらゆる業種に影響が及んでいます。まさに未曾有の事態であり、農業においても、外国人技能実習生が来日できず労働力が確保できない、売り先が激減して収入が減った、といった産地の声が多く聞かれています。その一方で、宅配サービスや在宅勤務向けのITサービスが利用者を拡大するなど、業種あるいは業態によって受ける影響も様々という状況です。

我々種苗業においては、残念ながらマイナスの影響も見受けられます。外出自粛で店頭にお客さんが来なくなった、物流の混乱で予定していた種子が届かなかったなどの声を伺っております。折しも春の種まきシーズンに当たったことから、会員の皆様には制約された営業環境下でのご苦労が多かったことと推察いたします。

いうまでもなく、農業は食の根幹を支えるものであり、生産活動の停滞は許されません。世界的に感染症蔓延防止のために各種経済活動の禁止や自粛が求められた状況においても、多くの国で農業がその例外とされていたことはその証左であります。
一方、今回のことで、我が国の食を外国に頼りすぎると言うリスクが浮かび上がり、国内農業の重要性が見直される大きな契機になるのではないかと思います。季節性がある種苗業においては、商品を適期に提供できること、そしてそれを安定して継続できることが重要であるのは皆様もご承知の通りです。今後は、保有する種子在庫量にも再考の必要が出てくるかもしれません。このように、新しい生活スタイルやITの更なる普及などの社会の変化に沿って、しっかりと会員の皆様との間で情報と意識の共有化を図りながら、今後の協会運営をしていきたいと考えています。

さて、前段でも述べた種苗法の改正については、国会に提出されましたが新型コロナウイルス対応のために国会審議日程が窮屈となり、今国会での成立は見送られ継続審議となりました。今回の改正法案は2002年に小泉内閣が唱えられた「知財立国」の趣旨に沿うものであり、登録品種に対する知的財産としての保護を強化し、優秀な品種の国外流出を防ぐことを狙ったもので、我が国の農業を発展させるために不可欠な新品種の研究開発を下支えする改正であると考えています。その内容には、登録品種の自家増殖に制限が加えられるということで、これに反対する議論も展開されましたが、原則許諾制とされることは国際標準に合わせるということであり、品種開発を行っている我々の業界だけでなく農業界全体にとって大いに歓迎すべきものです。即ち、種苗の購入が適正に行われ、正当な対価がさらなる新品種の育成につながることが期待されますので、メーカー会員だけではなく、卸小売会員や生産者にとってもメリットが大きい改正内容と理解されるべきものです。日種協としても引き続き改正案の成立に向けて働きかけを続けてまいります。

ここに至るまでに、誤解に基づくと思われる反対声明が出されたり、根拠のない不安を生産者や消費者に与えるような議論や報道もなされました。日種協では、既に野菜種子部会などを通じて会員の皆様に正確な内容についての情報提供を行ってきたところですが、今後も継続して会報やホームページによる情報提供や、店頭掲示用のポスター作製などを通じた周知活動を行ってまいります。会員の皆様には、日種協から提供される情報等について引き続き目を通していただき、質問などは遠慮なく事務局へお問い合わせいただければと考えております。

農業振興に貢献する優れた特性を持つ種苗の安定的供給という社会的使命

結びとなりますが、会員の皆様の益々のご発展とご健勝を心よりお祈り申し上げます。
困難な情勢が続いておりますが、引き続き日本種苗協会をどうぞよろしくお願いいたします。

一般社団法人日本種苗協会
第11代会長 金子 昌彦